1年生、インタビューを実践的に学ぶ

2020年09月11日

長野に深く関わる多彩な講師をオンラインでつないで

 9月8日(火)9日(水)は、1年生の『インタビュー実践』を実施しました。
 7月に実施したディスカッション講座につづき、フィールドワークなど課題研究に必要なスキルである、インタビューを実践的に学ぶ授業です。講師の先生とオンラインでつなぎ、様々な分野で活躍する大人に実際にインタビューすることで、インタビューとは何かを考える授業でした。

 NGP室から、インタビューで心掛けてほしい点として、①自分が聞いてみたいことを聞く、②皆が聞きたいであろうことを聞く、③講師の先生が話したいことを聞く、の3つの視点を提示しました。この3点を意識して、聞き手も話し手もインタビューに関わった全ての人が有意義であったと感じる場になったでしょうか。どんなインタビューがあったのか、少し振り返ってみたいと思います。


●1組:岡根谷 実里氏(クックパッド・世界の台所探検家)
 世界の台所探検家として、60か国以上、実際に巡った各国の料理を通じ、まだ知りえない遠い世界を近くに感じて欲しいと活動を続ける岡根谷先生に対して「現地でのコミュニケーションはどうしているのか?」。
 岡根谷先生は、あなたならどうする?と逆に質問し生徒に考えさせた上で、『コミュニケーションの基本は言葉ではない。では何で伝えるか、身振りや目の動き、言葉以外のもので伝わってしまう。料理は一緒にするものだし、経験を共にすることで分かり合える。片言の英語でも伝わるので、できない、難しいではなく、まずはやってみることが大切。』
 最後に、『知りたいという気持ちを持って、考えて質問してくれたことが伝わってきた。考えた仮説を確かめるためにするのが質問で、何を知りたいのかということがとても大切。きょうの経験を、これからの研究活動に活かしてほしい。』と激励してくれました。


●2組:中島 孝明氏(元米国PwCパートナー)
 ニューヨークからオンラインで繋いだ中島先生。通算27年にも上る米国生活で学んだ大事なことは“自立・競争・多様性”で、自分にとってのこの3点を考えて欲しいとのお話に、「日本に帰国するタイミングもあったと思うが、今も住み続けている理由は?」。
 中島先生からは『アメリカには良いところも悪いところもある。長く住んでいるとアメリカの良いところが自分に合っていると感じた。多様な人種がいて、多様な意見が飛び交う、そういう環境が好きで住み続けている。海外に行くと必ず日本のことを聞かれる。お互いに正しい歴史認識をして、日本がどういう国でどこへどう向かうのかをしっかりと考えてほしい。』と、今もなお米国在住であるからこそのメッセージをいただきました。


●3組:清水 唯一朗氏(慶應義塾大学 総合政策学部教授)
 自身の中学や高校時代のエピソードを笑いを交えて紹介し、生徒たちと近い関係を作りながらも『インタビューは聞き手の反応がとても大事。反応して』などと聞く側の姿勢をはじめ意識的にインタビューを考える場を作ってくれた清水先生に対して、「大学での新型コロナウイルスの影響は?」。
 『問題が起きたら、それを解決する、を学びとしている。コロナ禍でオンラインを最大限活用する授業をすぐに考えた。来日予定だった留学生に声をかけてゲストスピーカーとして招き、学生達とディスカッションする場を作った。普段は呼ぶことができない国の先生と繋がることができたのもオンラインの強み。影響は大きかったがその都度克服してきた。』
 
 国際学会などで英語発表する機会も多くある清水先生は、高校での英語学習について聞かれると、『実は英語は今でも苦手。学会は上手な英語だから聞く、下手な英語だから聞かないのではなく、コンテンツを聞きに来ている。話す内容に興味があるから聞いてもらえる。ある程度話すことができれば、あとは中身の問題。自分の伝えたいことをどう伝えるかが大事になってくる。』


●4組:土屋 龍一郎氏(長野国際友好協会・理事長)
 エムウェーブ代表取締役社長をはじめ、ケーキ店、飲食店、服飾関係など多くの事業を立ち上げ、多彩な職業を経験したことが自分自身に宝となっているという土屋先生に、「社会に出て役立った学生時代の勉強は?」。
 『経済や経営と数学の結びつきを強く感じた。高校時代に専門性を突き詰めることも大事だが、自分の興味があるものも勉強してほしい。社会で求められているのはセカンダリーな部分もある。まさに今、この高校時代に色々とチャレンジしてほしい。』
 
 また、2001年9月ニューヨーク同時多発テロ発生時、その場にいたことが危機管理を強く意識することにつながったという土屋先生は、『アフターコロナの町づくりは、経験値の多さや危機管理で乗り越えてきた私でも難しい問題。むしろ若い皆さんの考えが必要になってくる。時代のにおいを嗅ぎ取って様々なことに挑戦して。』と話し、地域活性などに広く携わる立場からも、若い力に期待をしてくれました。


●5組:牧野 浩文氏(元日本コカ・コーラ社 取締役副社長)
 外資系大企業3社で、経営企画やマーケティングなどの分野に長く携わり、自身のこれからを、これまで受けてきた支援に対して社会全体に恩返しをする時とした牧野先生は、目標を立てて、将来のキャリアアップへロードマップを作り、節目節目で自分を見つめ直しながら、現状に満足することなく徹底して挑戦してほしいと話してくれました。これを受けて生徒から「目標をどうやって立てていけば良いのか?」。
 『まず自分の強み、弱みを分析する。強みや弱みにどういったものがあるかを明確にしてから目標を設定する。先生などに客観的な意見をもらうと参考になるのでは。その際に自分とは違う意見を認容することを忘れずに。ディスカッションでも同じだが、意見の多様性、それぞれの意見のバックグラウンドを大切にして。』


●6組:内堀 繁利氏(長野県教育委員会 高校改革推進役)
 長く教育現場を歩んでこられた内堀先生は、モチベーションを持って学校生活を送るには何事にも当事者意識を持つことが大事で、心の持ちようも自分次第でこうなりたいと思ったら訓練すること、やらされているではなく、興味を持てるものを自分で探究していくことが大切だと話してくれました。
 これを受けて生徒から「これから総合の授業で身近な課題を解決していく。正直、地域のどこに課題があるのか分からない。どうやって見つけていけばいいのか?」。
 内堀先生は、課題は自分で見つけるものと前置きした上で、『課題は日常のどこにでも転がっているもの。例えば毎日の電車通学で本数が少ない等、ここはちょっとおかしい、こうすれば良いのではと考えていくことで、自ずと課題となっていくのではないか。』と今後の課題研究へのヒントを下さいました。


●7組:越 ちひろ氏(現代アーティスト)
 壁画という手法で日常の様々な隙間にアートを取り入れて、その素晴らしさを広く知ってほしいと活動する越先生に、「作品を描くモチベーションはどこから?」。
 『人の喜びに変わるところがモチベーションになっている。下書きなしの一発勝負で絵を描いているので、仕事に対しての恐怖が頭に浮かぶこともあるが、依頼主やその空間を使う人の笑顔を思い浮かべ、自分のパワーに変えている。』

 また、中学3年生で絵を描き続ける道を選んだという越先生に、「早い時期に将来を決めたことに不安はなかったのか?」という質問をしたところ、『逆に将来を遅く決めるのはもったいないと思った。自分にできることを早い時期からやっていけば人に勝てると考えた。これから進路を考えていくにあたって、自分のやりたいことを可能にするために、努力をし続けることが大事になるのでは。』
 


 1年生は今後、10月にはグループで研究課題を決定し、その課題を解決するためにフィールドワークに向かいます。実践的な講座を経て、いよいよ研究活動が本格的に始動します。

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