1年生、インタビューを実践的に学ぶ
2021年09月09日
様々な分野で活躍する多彩な講師から
9月7日(火)8日(水)は、1年生の『インタビュー実践』を実施しました。
夏休み前に行ったディスカッションを学ぶ授業につづき、フィールドワークなど課題研究に必要なスキルである、インタビューを実践的に学びます。講師の先生とオンラインでつなぎ(一部対面)、様々な分野で活躍する大人に実際にインタビューすることで、インタビューとは何かを考える授業でした。今年度の1年生にとっては、初めて外部講師から学ぶ場になりました。
NGP室からは、インタビューで心掛けてほしい点として、①自分が聞いてみたいことを聞く、②皆が聞きたいであろうことを聞く、③講師の先生が話したいことを聞く、の3つの視点を事前に提示しました。この3点を意識して、聞き手も話し手もインタビューに関わった全ての人が有意義であったと感じる場になったでしょうか。どんなインタビューがあったのか、講師の先生のお話も含め、少し振り返ってみたいと思います。
●清水 唯一朗氏(慶應義塾大学 総合政策学部教授):1、2組
昨年度もインタビュー実践で講師を務めて下さった清水先生は『インタビューは聞き手の反応がとても大事。理解や興味があるということを知ることができる。反応して』と、オンラインならではの難しさもある聞く側の姿勢を、まずはしっかりと示してくれました。
また、インタビューは話し手と聞き手の考えが合わさることで新しいものが生まれるとした上で、『話を聞くことで関係性ができる。自分の関心がある分野に関わる人たちとのつながりが出来る。関係が出来上がる最初のきっかけとなるので、それを広げ、次に生かしていくことが大切だ。』と、意識的にインタビューを考える場を作ってくれました。
自分でも友人とディスカッションをすることがあるという生徒から「討論が広がりすぎた時はどう対応すべきか?広がった話題を生かすべきか?」
『うまく回収することも大切だが、話が脱線して、自分が想像しないところに話題が広がっていくことこそ、インタビューやディスカッションの醍醐味。とても意味のあることだ。』
これからフィールドワークなどで実際に大人を相手にインタビューをすることになる生徒たちに向けて、『相手が発した“温度のある言葉”や大事にしている言葉を感じ取ってほしい。なぜこれを大事にしているのかを考えると、相手が何を伝えたいのかがわかってくる。』と、今後の活動へのヒントを下さいました。
●山田 康弘氏(NHK長野放送局 アナウンサー):3、4組
24年にわたりアナウンサーとして報道現場などに携わってきた山田先生は、県内をはじめ全国でも続き、身近になった災害報道に際して、『いざという時にどんな言葉を伝えれば、命を守る行動につながるかを常に考えている。災害時に犠牲者を一人も出したくないというのがアナウンサー人生の中で強く感じていること』だと話してくれました。
仕事上、ジャンルを問わず多くの人達にインタビューする機会があったという山田先生は、質問する時に押さえておきたいポイントは何だと思う?と逆に質問し、テンポよく生徒たちに考えさせる場を作った上で、『質問には事実を確認する側面があるだけでなく、インタビュー(inter + view)という言葉が表すように、相手の心情や内にあるものを引き出すものだということを覚えておいて欲しい。』
できるだけ質問に答えながら、自身や仕事の話をしていきたいという山田先生に対し、生徒から「仕事上での失敗は?それが役に立つことはあったか?」。
『失敗しないことはない。失敗こそすべて。失敗が経験となり、その積み重ねが自分の血となり肉となる。次にどう生かすことができるのかを考えることが大事になってくる。』
また、「高校生のうちに明確に夢を決めた方がいいか?」という質問には、『自分自身は、高校時代はただ目の前のことが楽しかった。夢が明確な形になったのは大学生になってから。今は班活でもどんなことでも是非これだと思うことにのめり込んで欲しい。夢中になっていてOKという時代は高校生のうちだけ。』と、若い生徒たちのこれからにエールを送ってくれました。
●中田 北斗氏(北海道大学大学院獣医学研究員 毒性学教室学術研究院):5、6、7組
学生時代に東南アジアを訪れた際、急激な開発がもたらす豊かさの裏にある貧困や環境破壊、健康被害などを目の当たりにしたことをきっかけに、ザンビアにおける鉛汚染問題などに取り組んでいる中田先生。環境問題を切り口にしながら、『今ある国際問題は、全て一国だけの問題とはならない。鉛汚染の問題はザンビアの話でも、多様な使い道がある鉛を輸入に頼らざるを得ない日本など先進国も直接的でなくとも関係してくる話だ。』としました。
生徒から電気自動車で使用されるレアメタルの例を挙げて、「環境を良くするための技術開発が、環境破壊につながりかねない。この問題についてどう思うか?」。
『電気自動車の開発か、ガソリンを使い続けるか、どちらか1つで解決できるものではなく、バランスが大事になる。そもそも自動車を減らすということを真剣に考えるべき段階に来ている。今の利便性を確保しながら、環境問題を解決に導くのは非常に難しい。』
また、「将来、ザンビアが歩んでほしい姿は?」と問われると、『欧米や日本のような国になりたいはずだと考えている人もいるが、それは違う。現地の人たちが求めていることを尊重することが大事。彼らの国なので、彼らが進むべき姿を決めるべきだ。』
最後に、『環境問題も含めて忘れてはいけないと思うのが、次の世代に何を残していくか。自分は、次の世代が使う環境などを前乗りして使わせてもらっているという感覚でいる。そういう視点を忘れずにいて欲しい。』というメッセージをいただきました。
1年生は今後、グループで研究課題を決定し、その課題を解決するためにフィールドワークを行う予定です。春からの実践的な講座を経て、いよいよ研究活動が本格的に始動します。